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アメリカの「プロム」~ 高校生が体験するフォーマルな社交文化

 ー スタッフのコラムー
ロドリガス晴海(クリエイティヴ・ヴィジョンUSA)
【アメリカの「プロム」~高校生が体験するフォーマルな社交文化】

私は、毎月アメリカから、
季節の行事を通じて日本文化との違いなどを紹介していますが、
4月に最初に思い浮かぶことはイースターです。 
(イースターについては起源や歴史をすでにご紹介してあるので
ご興味のある方はアーカイブをご覧ください)
https://www.creativevisionworld.com/topics/blog/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%a7%e6%b5%b8%e9%80%8f%e3%81%97%e3%81%aa%e3%81%84%e3%82%a4%e3%83%bc%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc/

そこで今回は、日本人にはあまりなじみのない
ハイスクールの”プロム“という行事を取り上げてみたいと思います。 

アメリカの高校生活において、春に行われる「プロム(Prom)」は
特別で象徴的なイベントです。
プロムとはプロムナード(promenade=正装しての行進)を
語源とする、フォーマルなダンスパーティーのことで、
主に高校最終学年(シニア)やその一つ下の学年(ジュニア)の生徒たちが参加します。
アメリカのハイスクールの最終学年のシニアやジュニアは、
2月のバレンタインデーのころから、
プロムのダンスに一緒に参加する相手を決めるのにそわそわします。 

そして、このプロムに一緒に参加することが、
カップルであることの正式な”宣言“になります。 
近年では、同性のカップルも堂々と参加できる
オープンな雰囲気が確立してきています。
このイベントでは、男子はタキシード、女子はドレスを着用し、
パートナーと一緒に会場へ向かいます。
リムジンをチャーターする生徒もいれば、
グループで写真を撮ったり、食事を楽しんだりと、
その日を思い出深く演出するための準備も入念に行います。

アメリカではほとんどの州で16歳から自動車の運転免許が取得できるので、
この日は自分の車ではなく、親の車をピカピカに磨き上げて
パートナーを迎えに行くこともよくあります。 
また女の子は早くからドレス選びを始め、
仲良しグループで色のテーマを統一したり、
美容院の予約、ネイルなど念入りに準備をします。 
女の子のドレスの色やスタイルがきまると、
男の子はタキシードのベストやネクタイの色を合わせ、
女の子には手首につけるリスト・コサージュ、
男の子には胸につけるブートニアの色が決まります。 
そして、通常は、男性側が車を用意して女の子を迎えにいき、
そこでリスト・コサージュを付けて、
胸にはブートニアとつけてやっと出発です。



プロムはダンスだけでなく、
「プロムキング」「プロムクイーン」と呼ばれる
人気投票による表彰なども行われ、学校全体で盛り上がる一大イベントです。

プロムの歴史は19世紀末のアメリカの大学にまで遡り、
当初はエチケット教育や社交の一環として始まったものが、
20世紀に入って高校にも広がりました。
特に1950年代以降、アメリカの豊かさと若者文化の高まりと共に、
プロムは「高校生活の締めくくり」
「大人への一歩」を象徴するイベントとして定着していきました。
プロムの特徴の一つは、
「若いうちから社交性や自己表現を重んじる文化」にあります。
高校生であっても、異性とフォーマルにペアを組んで人前に出たり、
周囲と自分らしさを表現し合う場が設けられているのです。

これは日本の学校文化と大きく異なる点といえます。
日本の高校生活では、
卒業式や文化祭、修学旅行といった集団行動が中心で、
「個」の表現より「全体の調和」が重視されます。
また、日本では高校生が夜に正装して
異性とパーティーに参加するという行動に対し、
保護者や社会の目が慎重である傾向もあり、
プロムのような行事はあまり奨励されていないようです。
アメリカでは、プロムを通して礼儀や自立心、
他者との関わり方を学ぶと同時に、
青春の思い出としての価値も大きく位置付けられています。
映画やテレビドラマにも頻繁に登場することから、
若者たちにとっては「特別な一夜」として位置づけられています。
(ただしプロムへの参加は自由意志で強制ではありません)

プロムは単なるダンスパーティーではなく、
アメリカ文化に根ざした「社交の学びの場」であり、
「個」を認める教育の一環でもあります。
日本とは異なる価値観の中で育つアメリカの高校生たちが、
どのようにして大人への第一歩を踏み出すのかを知る手がかりとして、
プロムは非常に興味深い文化イベントと言えるでしょう。
 

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