アメリカ最前線リポートVol.26
ー CVリポートー
By アーカス・リツコ(CV メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.26】
・バイデン大統領 – AI開発リスク軽減に向けた大統領令に署名
10月30日、バイデン大統領は、
高度な人工知能(AI)の規制に関する大統領令に署名しました。
これに先立って行われた会見では
「AIの可能性を実現し、リスクを避けるためには技術を管理する必要がある」
と規制の必要性を訴え、
議会に対し、AIの管理やプライバシー保護に関する法整備を急ぐよう求めました。
また、ホワイトハウスのブルース・リード副首席補佐官は
「この大統領令はAIの安全性、セキュリティー、信頼性に関して、
最もパワフルな一致団結した行動であり、他国では例がない」と述べました。
今回の大統領令は、
AIに関して、新たな安全性評価、公平性と公民権に関するガイダンス、
AIが労働市場に与える影響に関する安全評価を公開前に義務付けるもので、
米国初の法的拘束力のある行政措置です。
今夏、オープンAIやアルファベット(GOOGL.O)、メタ・プラットフォームズなどは、
AI技術の安全性確保のため自主的にAIが生成したコンテンツに
「透かし」を入れるなどの対策を取ると約束していましたが、
今回の大統領令はこれより踏み込んだ内容となっており、
商務省はAIで生成されたコンテンツの認証や透かしに関する
指針を策定するとしています。
ホワイトハウスが公開したファクトシートによると、
大統領令は以下の8つの項目によって構成されています。
1. 安全性とセキュリティーの新基準
2. 米国民のプライバシー保護
3. 公平性と公民権の推進
4. 消費者、患者、学生の権利保護
5. 労働者の支援
6. イノベーションと競争の促進
7. 国際的な米国のリーダーシップの促進:
8.政府が推進し、 AIの責任ある効果的な利用の保証する
これにより
アメリカの安全保障、経済、公衆衛生、
安全にリスクをもたらすAIシステムの開発者は、
一般公開前に国防生産法に沿って
安全性テストの結果を米政府と共有することが義務付けられることになります。
また、安全性テストの基準を設定し、
関連する化学、生物、放射線、核、サイバーセキュリティのリスクに対処するよう
各機関に指示しています。
この大統領とは別に、
議会ではAI規制に関する法案作りが進められており、
9月に上院ではAI規制を巡る超党派の特別会議が開催されたり、
IT企業との間で規制に関する会合が行われています。
この流れは世界的になっており、EUなどでもAI規制が検討されています。
参照:https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2023/10/30/executive-order-on-the-safe-secure-and-trustworthy-development-and-use-of-artificial-intelligence/
大統領令の主要な構成要素詳細:https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2023/10/30/fact-sheet-president-biden-issues-executive-order-on-safe-secure-and-trustworthy-artificial-intelligence/
・マイク・ジョンソン議員が下院議長に選出
アメリカ下院議会は10月25日、議長選挙を行い、
過半数の220票を獲得した共和党保守派のマイク・ジョンソン氏を
新議長に選出しました。
下院議長は、大統領が職務不能になった場合に大統領職を引き継ぐ権限継承順位で
副大統領に次ぐ2位の要職でありながら、
ケビン・マッカーシー氏が解任されたのち、
22日間に渡って議長不在という異常事態が続いており、
ようやく着地点を見た形です。
ジョンソン氏は
2016年からルイジアナ州の選挙区選出の下院議員を務めており、
2019~2021年までは議会最大の保守派議員団である
共和党調査委員会の委員長を、
2021~2023年までは下院共和党会議の副議長を務めた人物で
トランプ前大統領と近い関係にあると言われています。
そして、2020年には下院議場や法廷で同年の大統領選挙の結果に異議を唱えたり、
全国的な中絶禁止法を制定する法案を支持し、
同性結婚を禁止する法律は違憲であるとした
オーバーグフェル対ホッジス裁判に影響を与えるなど
穏やかな物腰とは裏腹な一面も持ち合わせています。
共和党の後任選びは
穏健派と保守強硬派の対立が続いたこともあって困難を極め、
ジョンソン氏は4人目の候補でした。
議員経験が浅く、敵が少ないことから「消去法」で選ばれたと揶揄する声も多く、
また上院共和党や民主党とのパイプが細いことも不安材料と言われています。
今後は、イスラエルやウクライナへの支援を盛り込んだ緊急予算や、
新年度の政府予算案の調整などの大仕事が待っており、
共和党内の保守強硬派と穏健派をうまくまとめていけるかが注目されています。