アメリカ最前線リポートVol.37 【トランプ関税の行方】
ー 今週のリポートー
アーカス・リツコ(メルマガ編集長)
アメリカ最前線リポートVol.37
【トランプ関税の行方】
「これからどうなるんだろうね」
これは、アメリカに限らず、
世界中の人たちの最近の会話の中で一番多く話されるフレーズ。
4月2日、アメリカのトランプ大統領が
昨年の大統領選挙で提案していた通り、
アメリカが輸入するすべての製品に対する新たな関税の計画を発表し、
すべての輸入品に少なくとも10%の基本関税をかける措置を取ると発表しました。
資料によれば、基本関税は100カ国以上に適用し、
うち約60カ国には税率を上乗せするというもので、
トランプ氏は、これは「相互」関税だと説明しています。
また、中国製品に対しては現在の20%に加え34%の関税を上乗せし、
EUには20%、台湾には32%、インドには26%の関税をかける。
もちろん日本も対象外ではなく、24%の関税をかける方針でした。
一方、イギリスには基本関税の10%だけを課すという算出方法も甚だ不明なものでした。
この日のトランプ氏は国旗を背に、
各国が高率の関税や他の貿易障壁で不公正な貿易政策を取り、
アメリカが被害を被った。それに対する仕返しだと
鼻息荒く今回の措置の必要性を主張し、
アメリカ政府は一律の10%の関税は5日に、
特定の国に対する上乗せ関税は9日に、それぞれ発動すると発表しました。
この発表を受けて、
金融市場は、景気後退が不可避との懸念から株は投げ売りされ、
ダウ工業株30種平均など主要株価指数は急落。
専門家たちは関税による世界経済の影響はリーマンショックや新型コロナショックに
匹敵するといった指摘も出るほどで、世界中に激震が走りました。
こうしたショックは各家庭にも及んでいます。
アメリカ人の多くは、雇用主が提供する企業型確定拠出年金制度である
401Kに加入していますが、
これは単なる積み立て金ではなく、
長期的に貯蓄と投資を行うために使用できる税制上の優遇措置を備えた貯蓄口座です。
多くの場合は、元金を下回ることはないのですが、
4月2日以降わずか1週間で我が家の401Kの数字は25,000ドルも減ってしまいました。
大事件です。
「これからどうなるんだろうね」とどこの家庭からも嘆きが聞こえてきます。
すると突然、トランプ氏が自身のSNSに、
米国に対して報復措置を取っていない国に対し、
90日間の猶予期間を設けると投稿しました。
猶予期間中は相互関税を大幅に引き下げ、
10%とする措置を即座に発効するとしていますが、
対中国には125%に上げるということです。
トランプ氏は、関税の一時停止を発表後、
市場を注視していたことを認めています。
トランプ氏を(関税の発動を猶予する)決断させた材料の一つは、
10年物国債の利回りの急上昇だったと言われています。
国債の利回りが上昇すると、
アメリカのの消費者は
住宅ローン金利や企業の資金調達コストなど、
さまざまな面でコストの上昇に直面することになるため、
財務相からも懸念の声が出ていたからです。
この発表を受け、9日に安心感が広がり、
株価は急反発。9日の米国株式市場では
ダウ平均の上げ幅は2962ドルと
ダウ平均の算出開始以来、最大となりました。
ただ、米中双方の応酬が激化し、
供給網混乱や世界経済が景気後退に陥るリスクが
なくなったわけではありません。
4月10日、ホワイトハウスは
「相互関税」も含めた中国に対する追加関税の税率は、
当初の125%から改め145%になると明らかにしました。
これで米中の2国間交渉は先行き不透明で、
どういった歩み寄りができるのかわからないため、
株式相場は不安定な状況が続いていくでしょう。
トランプ大統領に翻弄されるアメリカ、
そして世界経済。
「これからどうなるんだろうね」
というぼやきが怒りに変わり、
混乱がさらに悪い事態を招かないことを切に願う今日この頃です。
続きは次回のリポートでお伝えします。