アメリカ最前線リポートVol.49:身近で起きた事件からアメリカの銃社会を考える
ー 今週のリポートー
アーカス・リツコ(メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.49】
身近で起きた事件からアメリカの銃社会を考える
日本では報道されないような事件ですが、
今週の水曜日(5月12日)、私が日々、犬の散歩をするコースで殺人事件がありました。
安全と言われているラスベガス市内の静かな住宅街です。
事件が起きたのは、朝5時45分。
かなりの早朝です。
老婦人二人がウォーキングをしていたところ、
近づいてきた男に「持ち物をすべてよこせ」と脅され、
一人の女性が拒否したところ、いきなり銃で撃たれ、その場で死亡。
その後、もう一人の女性にも同じように脅し、
彼女の持ち物を奪って、犯人は歩いて逃走。
地元ニュースによって、
犯人が依然逃亡中と報道されると近隣住民は不安な夜を過ごしました。
翌日、朝に24歳の男が逮捕されましたが、
動機など詳しいことはまだ発表されていません。
亡くなった方が気の毒で、
不運だったという言葉では片付けられない憤りを感じます。
犠牲になった女性たちも、
時間帯が違っていれば、被害に遭わずに済んだわけですし、
もしかしたら毎日その道を通る私だって犠牲になっていたかもしれない。
だいたい朝の散歩に大金持ち歩く老人がいるでしょうか?
私も犬の散歩の時は、携帯電話と家の鍵しか持っていきませんし、
貴金属もつけていきません。
普通に考えればわかることが
わからないような考えの人が銃を持ち、
突如としてなんの関係もない、なんの罪もない人を殺傷する。
それによって生まれる家族の悲しみ、近隣住人の怒り、怯え、不安は
理不尽以外の何物でもありません。
時を同じくして、ラスベガスではもう一件、銃撃事件がありました。
スーパーマーケットの従業員二人が銃を持った男に突然撃たれ、死亡したのです。
犠牲者はカップルで、犯人は女性の元パートナー。
二人の間には子供もおり、親権問題で争っていたそうです。
男は、事件が発生時、同じく店にいた勇敢な人たちによって捕らえられ、
警察に引き渡されましたが、複数の銃器を所持していました。
こういう事件が起こると、
「気を付けて過ごさないといけない」と
自分自身、そして人からも同じことを言われますが、
散歩やスーパーの買い物でそんな目に遭うのなら、
どう気を付ければよいのかわかりません。
毎日、神様に「今日は突然撃たれませんように」と祈ったところで、
そういう不運に遭遇してしまうことが
誰にでもあるということがとても恐ろしく感じます。
気になったので調べてみたところ、
米国における年間の「銃による死亡率」(自殺を含む)は
おおむね10〜15人/100,000人(0.01%〜0.015%/年)。
単純計算で人生を80年とすると、
生涯(概算)で約0.8%〜1.2%の範囲になるそうです。
これには地域や年代によっても異なりますが、
決して低い数字ではないように思います。
ちなみにアメリカでは年間約5万人の尊い命が銃によって奪われています。
アメリカでは銃規制は進んでいると言っても、連邦法と州法の二層構造。
州ごとに購入基準、所持許可、携帯(open/ concealed carry)規制が大きく異なります。
また、全米ライフル協会(NRA)などのロビーが強い影響力を持っていることから、
銃規制賛成派と権利擁護派で毎度のごとく激しく政治対立しており、
連邦レベルの大きな改革はなかなか進みません。
そして、これこそが矛盾していることなのですが、
銃所持反対を唱えている私の家にも銃があります。
これには長く激しい葛藤がありました。
話せば長くなるので割愛しますが、
「何かあったときに家族を守るために必要」
という夫(アメリカ人)の意見に屈した形です。
こうして銃はどんどん増えていき、所有者もどんどん増えていきます。
この悪循環は止まることがないのだろうかと、
昨日の事件をきっかけにさらに考えるようになりました。
この問題については、一回のメルマガでは語りきれませんので、
また別の機会に掘り下げたいと思います。
次回は、最近アメリカで多発している
大変深刻な高齢者のご近所問題について、
私が実際に通訳の現場で体験した事例をお話したいと思います。





