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アメリカ最前線リポートVol.21 WBCを観戦しつつ、アメリカの平和について考える

ー CVリポートー
By アーカス・リツコ(CV メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.21
WBCを観戦しつつ、アメリカの平和について考える】

侍ジャパン、準決勝進出、嬉しいですね!
次回の対戦相手はプエルトリコを負かして準決勝に進んだメキシコ。
メキシコは強豪アメリカにも11ー5で勝っているチームですので

厳しい試合が予想されますが、優勝目指して頑張ってほしいと思います。

さて、ここアメリカではWBCがスタートした時点では
”今一つ”盛り上がりに欠ける印象でした。
…というのも、アメリカは前回の優勝国とはいえ、
WBCは2006年スタートの歴史の浅いゲームであり、
アメリカの野球ファンにとっても
「国際エキジビションゲーム大会」という認知しかないからです。
スポーツブックでの人気も他のレギュラーシーズンのスポーツや
ワールドカップの時の盛り上がりには到底及ばず、
決勝までこんな感じが続くのだろうかと心配していましたが、
アメリカ・チームも次回のベネズエラ戦で勝てば準決勝進出です。
決戦の舞台がマイアミに移り、メディアでの扱いも増え、
多く取り上げられるようになりました。

実は、今回のアメリカ・チームは、MVPを3度受賞している
マイク・トラウト(エンゼルス)を主将に据え、
野手ではトラウト以外にもポール・ゴールドシュミット(カージナルス)、
ムーキー・ベッツ(ドジャース)のMVPプレーヤー二人が参戦、
その他にも10年連続でゴールドグラブ賞を受賞している
ノーラン・アレナド(カージナルス)や
昨シーズンの首位打者ジェフ・マクニール(メッツ)ら
タイトルホルダーがずらりと並ぶドリームチーム。
このチームで負けるわけにはいかないようなスターが揃っています。
MLB(メジャーリーグ)に詳しい方でしたら彼らの顔ぶれを見ればおわかりになるように、
アメリカチーム、すべての選手は両親ともにアメリカ生まれの白人、黒人ばかり。
つまり、MLBで活躍するアジア系、ヒスパニック系の選手は
出生地の母国の選手として出場しているので、
WBCの選手の構成は、なかなか面白いものになっているのです。

日本の選手の中でも、セントルイス・カージナルに所属する
25歳のホープ、ラーズ・ヌートバー外野手が日本代表として出場し、
大谷、ダルビッシュを並ぶ人気となっているようですね。
しかし、彼の経歴を見るとアメリカ生まれのアメリカ育ちでアメリカ国籍。
日本との縁と言えば、お母さんが日本人というだけ。
え?それだけで何で日本代表になれるの?と気になったので、
WBCの出場資格を調べてみると、
1. その国の国籍を持っている
2. その国の永住資格を持っている
3. その国で生まれている
4. 親のどちらかが、その国の国籍を持っている
5. 親のどちらかが、その国で生まれている
6. その国の国籍または、パスポートの取得資格がある
7. 過去WBC大会でその国の出場枠に登録されたことがある
ということで、ヌートバー選手は5に該当し、出場資格を得たようです。

何でもお母さんの出身地である埼玉県松山市では、
市を挙げてたっちゃんフィーバー(ヌートバーの日本名は榎田 達治)が起きているとか…。
また、ヌートバー選手が、塁上でコショウを引くようなポーズをすることから、
ペッパーミルもよく売れているようですね。
これはカージナルズでの対戦時に彼が使うPepper Grinder ポーズから来ていて、
「粘り強く頑張って出塁しよう」という意味が込められているとのことですが、
日本ではもっと広義にチームの団結力を高めるために使っていこうと
いうことになっているようです。
開戦前の記者会見が終わった後、椅子をちゃんと元の位置に戻すなど、
日本的な礼儀正しさ持ち合わせた好男子で、日本中を虜にしているヌートバー。
人気はしばらく続きそうですね。

日本以外の各国でもMLBで活躍する選手が「故郷に錦を飾り」
母国の選手として出場し、大歓迎を受けていることでしょう。

移民国家として成り立っているアメリカでは、
他国の人を積極的に受け入れ、国を繁栄させてきた歴史があります。
スポーツも同様です。
MLBは助っ人外人なしでは成り立ちません。
それに、今、アメリカ代表として戦っている選手たちだって、
元を辿れば、先祖は(アメリカ原住民でない限り)アメリカ以外の国の出身です。

他国の人を寛容に受け入れ、発展してきたアメリカ。
アメリカという国はそれが魅力であり、
そのことに異議を唱える人はいないでしょう。

つまり、私が何を言いたいのかと言えば、
移民を中心に成り立ってきた国家なのだから、
それによる差別や不平等はあってはならないということです。
1776年にアメリカが独立宣言を発令した時、
「すべての人間は、生まれながらに
侵されることのない平等な基本的人権を持っている」
という権利が保障されました。
今こそ、初心に戻り、アメリカで蔓延する
ヘイト・クライムを始めとする問題について考えるべきだと思います。

近年、人種ヘイトによる犯罪が多発しています。
1月に、西部カリフォルニア州モントレーパークの
アジア人が多く集うダンススタジオで
11人が殺害される銃乱射事件が起きました。
この事件の犯行動機はアジア人の容疑者による
個人的な恨みが原因とされていますが、被害者は全員アジア系でした。

3月14日、バイデン大統領は、事件現場を訪れ11人の名前を読み上げて
哀悼の意を述べた後、
「銃による犠牲者がでるのはうんざりだ。今こそ行動を起こさなくてはならない」
と述べて銃規制強化を訴えました。
加えて、アジア系が多い地区で事件が起きたことを踏まて、
「多様性こそ国の力だ」と語り、
地域社会は思いやりをもって生きていかなくてはならにと強調しました。
つまり、多くの人種が集まった多様性が国を繁栄させてきたアメリカが
それを否定するような行動を起こしてはいけないということです。

きれいごとを言われるかもしれませんが、
オリンピックや野球を始めとするスポーツに人種の壁はありません。
私たちの生きていく世界でも多様性を認め、寛容さと思いやりがあれば、
乗り越えていけることもたくさんあるはずです。
そういうことを考える意味でも
オリンピックやWBC,ワールドカップなど
スポーツの祭典には大きな意義があると思うのです。

…と、WBCを夢中になって観戦しつつ、
アメリカの平和について、世界の平和について深く考える今日この頃です。

さて、結果やいかに!

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