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JAPAN TECHの歴史とCES2025の振り返り

ー スタッフのコラムー
ロドリガス晴海(クリエイティヴ・ヴィジョンUSA)
【JAPAN TECHの歴史とCES2025の振り返り】

3月に入り、1月のCESの興奮が少しずつ落ち着いてきました。 
でもこれは決して興奮が”冷めた“のではなく、
次年度に向けた決意や覚悟を考えられるようになったということです。 

今回は、CESの歴史とまたCES2025で8年目となったJapan Techの
出展をサポートするスタッフとしての視点でCES2025を振り返ってみました。

1.CESの歴史と日本企業

主催はCTA: Consumer Technology Association。
CESは1967年にニューヨークで第一回が開催されて以来、
世界中の最新のテクノロジーの発表の場、
“未来が見える展示会”としての位置を確立しています。
家電製品の展示会として始まったCESが、
今ではAIなど最新のテクノロジーの発表の場として重要な位置を占めています。

*日本人が CESを” セス“と発音するのをよく耳にしますが、
これは日本語特有の表現であって英語でセスと言っても通じません。 
”シーイーエス”がこの展示会の略語ではなく正式名称です。

1900年代は日本の技術や製品は世界の最先端を走り、
CESでも大きな注目を集めていましたが、
2000年代に入ると、中国、韓国の大手メーカーや
政府の支援をうけた新規事業が大規模な展示で注目をさらい、
日本は後を追う立場となりました。
これは日本の技術の衰退ということではなく、
中国や韓国の企業が国からの支援を得て、
大規模な展示ブースで圧倒的な存在感を示しているからと感じます。
日本の大手企業やスタートアップも最新技術を世界に発信。
特にスマート家電、ロボティクス、
次世代モビリティの分野で存在感を示していますが、
国としての存在感は、中国や韓国に圧倒されています。
韓国や中国は、その他の会場でも大きなパビリオンを展開し、
国を挙げてのCESへの資本の投入が感じられます。

日本はEureka Parkというスタートアップ専用のエリアに
J-Startup、とJapan Techの二つのパビリオンが存在しますが、
日本企業の出展企画、運営に関わる者としては、
”日本“という国の存在感をもっと強く出したいという気持ちもあります。
今回のJapan Techの出展社様のコメントの一つに
”中国や韓国のCESでの存在感は圧倒的ではあったが、
自分達は独自の研究と技術を磨き、確実なものを世界に発信していく“ 
という言葉に日本人が目指している本物の技術や
品質の高さを確信することができました。

2.Japan Tech Pavilion出展までの流れ

Japan Techで出展を検討されている企業は、
4、5月に開催される説明会に参加後、 個別の相談を経て、出展を申し込みます。
締め切りは例年7月末です。 
翌年の1月の展示会の締め切りが5か月も前とは日本の展示会とは大きく異なる点ですが、
それだけの準備期間が必要ということの証です。 
出展申し込み以降は製品の完成と並行して、多くの出展手続きの書類作成が始まります。
スタートアップとしてのカテゴリー申請、英文資料作りや、
世界に向けて発信するCES Directoryでの紹介文、
日本語と英語でのプレスリリースの作成など多くの作業がありますが、
Japan Techでは、これらの申請手続きや英文資料作成を
出展社から提出された日本語の資料に基づき、
CESのルールやカテゴリーを熟知したスタッフが編集、指導を行なうので、
英語での書類作成や煩雑な申請手続きの障壁が大きく下がります。

CESに限らず、海外の展示会出展で日本企業が陥りやすい間違いは、
日本での出展をそのまま海外に持って行こうとする点にあります。
特に日本での出展経験のある企業は、
日本人向けの製品資料をそのまま機械翻訳、
それで英語になっていると思い込んでしまう方が
多数いらっしゃいます。近年の機械翻訳やAI翻訳の進化は
著しいものがありますが、日本語をそのまま直訳すると、
一つひとつの単語は正しく訳されていても、
英文としては通じ難い文になってしまいます。

それは機械には文化背景発想がないからです。
海外出展の第一歩は日本の常識にとらわれず、
他国の文化背景を考慮する発想の転換と言っても過言ではないでしょう。

3.出展資格、カテゴリーの申請

CESのEureka Parkというエリアはスタートアップ限定のエリアで
その会社として” 初めての製品 “を出展するという厳格なルールがあります。
この点が日本で考えるスタートアップという枠よりも厳しい基準といえます。
その上、製品が” Innovative “であること、
かつCESの定める製品のカテゴリーに絞って出展申請しなければなりません。
言い換えれば、まっさらな新人スタートアップが
初めての製品(独自ブランドのオリジナル)でデビューする場所で、
そこにベテラン企業の参加は認められないのです。
よく” 新製品 “なら良いですか? “という質問を受けますが、
既に市場に出ている製品の新バージョンでは”初めての製品“としては認められません。

CES Eureka Parkでの出展は、厳しい基準をクリアする必要がある反面、
” 開発の最終段階“であれば出展が可能です。
CESのモットーである”未来が見える”場所として、
メディア、バイヤー、投資家は
この新人賞レースとなるEureka Parkに注目し、新しい発見をもとめて足を運びます。

過去の出展社から、自社の製品はAIや電源不要な製品なので
”ハイテックの展示会には場違いになりませんか?“
というご質問を受けたことがあります。
私は以前、骨髄損傷をされた障害者が
”自分の足で歩ける“ようになる義足の出展に関わりましたが、
義足自体にはチャージもAIも搭載されていないが、
その製品を作り上げる開発技術は、
素材の選定から、人間工学、
AIでの分析を駆使して作り上げられた製品でした。 
小さな目立たないブースで実際に車いすの方が
義足をつけて立ち上がり歩かれた姿には周りの来場者全てが足を止め、
涙ながらに拍手を送っていたことは、
決して忘れることのできない体験でした。

4.CES出展のメリット

Japan Tech出展社が口を揃えて言われるメリットは、
日本のメディアから取材を受けたということです。
単独出展では知名度のない企業であってもJapan Techというパビリオンでは、
世界からの日本への注目度と同時に、
日本人来場者、メディアからも大きな注目を集めます。 
NHK, 日経、その他日本の大手Mediaは
必ずJapan Techを取材ツアーに組み入れており、
ライブや日本のニュースでとりあげられた出展社も数多くあります。

また日本の展示会では会えない、
企業のDecision Maker(決断権を持つ人材)と
直接話しができるので次のステップには迅速に進みます。

CESには一般や学生は入れません。
必ず、メディアかビジネス、業界関係者である証明が必要なので、
来場者はただトレンドの視察とではなく、
多くが” 商談“を目的として参加しています。
そのため、出展社もそれなりの準備が必要で、 
日本の展示会方式で、
”名刺交換をして後日ご挨拶に伺います“という姿勢では相手の興味は薄れてしまいます。
現場でどれだけ”具体的“な話ができるかがキーポイントです。

CESに限らず、アメリカ在住スタッフとして、
日本企業が展示会を通して海外市場開拓への一歩を踏み出す
お手伝いができることをとても光栄に思っています。

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