アメリカ最前線リポートVol.37:トランプ政権で変わったこと
ー 今週のリポートー
アーカス・リツコ(メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.37】
トランプ政権で変わったこと
トランプ大統領が1月20日に就任し、
就任約1ヵ月の実績として、
雇用の創出、納税者の負担削減、公共の安全回復、
米国第一主義の外交などにおける取り組みを米国民にアピールしました。
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/
大きなところでは公約の一つだった
史上最大の強制送還作戦がスタートしています。
1月28日、NYのブロンクスで誘拐、暴行、窃盗容疑の不法移民者が
逮捕されたのをきっかけに、
NY州一帯、ニュージャージー州ニューアーク、
イリノイ州シカゴでも大量の不法移民の摘発が始まっています。
犯罪歴のある不法移民がまず摘発、強制送還され、
その後はアメリカに1,400万人いるとされる
不法移民が検挙される対象となるということです。
またアメリカトランプ大統領は、
アメリカの出生地主義
(出生した国の国籍が子の国籍となる方式。憲法14条で定められている)にもかみつき、
アメリカ市民、または永住権保持者以外の子供がアメリカで生まれても
市民権を得ることはできないという大統領令を出しましたが、
多くの州が違憲であると訴えていることから、
憲法改正への道は困難だと言われています。
政権が代わってまだ1カ月なので、
実際にアメリカで暮らしている私たちにどのような影響があるのかは
未知数の部分も多いので、
これから注意深く見守っていくしかないのですが、
海外との取引がある、または海外進出を目指す日本企業の方々にとって、
一番の関心事は関税の問題だと思います。
トランプ大統領は2月10日、アメリカに輸入される
鉄鋼製品とアルミニウムに25%(現在は10%)
の関税を課す文書に署名しました。
発動は3月12日からで、日本の製品も対象になります。
また、税率は具体的には明かさなかったものの
自動車への関税措置の導入も示唆しています。
また、2月4日には中国からの輸入品に一律に10%の追加関税を課す措置を発動。
これに対抗して、中国は2月10日からアメリカ産の石炭や
LNG=液化天然ガスなどの関税を引き上げました。
今後、米中の貿易戦争が激化すれば、
世界経済への影響は避けられませんが、
中国の対抗措置については、
追加関税の対象となる品目が限定的であることから、
中国側はアメリカとの交渉の余地があるという見方もあり、
両国の協議の行方が気になります。
アメリカ第一主義を掲げたおかげで関税率が転嫁されたとき、
負担するのは一般市民、つまり消費者です。
物価高がこれ以上進めば、本末転倒です。
トランプ関税は、米国のインフレをさらに進行させ、
高金利状態をつくる可能性が高いとも予測されています。
また、アメリカではもともと宗教、政治についての話題は
慎重にする傾向がありますが、
トランプ氏が第1期大統領を務めたころから、
親しい間柄でない人との政治談議はほぼご法度。
親族であっても、支持政党が違うことが
両者の関係に影を落とすことになっています。
それだけアメリカは分断されてしまっています。
今後、アメリカが、
世界から孤立していくことだけはないように、
祈るだけでなく、声をあげていきたいと強く思う今日この頃です。