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アメリカ最前線リポートVol.24 不思議の国、アメリカ

ー CVリポートー
By アーカス・リツコ(CV メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.24:不思議の国、アメリカ】

今年3月以降、ドナルド・トランプ前大統領は4回起訴され、
罪状は計91件になりました。
起訴内容は重罪がほとんどで、すべてが有罪になれば、
最高で717年の禁固刑が科せられる可能性があるということですが、
この数字はあまり現実的ではないようです。

起訴内容を簡単におさらいすると、
1度目の起訴は、
ニューヨーク市マンハッタン地区でのもので、
罪状は、2016年大統領選の選挙運動中に
元ポルノ女優に対して行った「口止め料」の支払いに関連した第1級ビジネス記録改ざん34件。
(すべてで実刑になれば、禁固136年)

2度目の起訴は、
政府の機密文書を自宅に持ち出し、
司法省の捜査を妨害しようとしたとして、連邦法に基づく41件の罪で起訴された件。
これらのうち32件は国防文書の意図的な保持、
残り9件は司法妨害、文書の不正隠匿、偽証罪で、
すべてが実刑になれば禁固450年。

3度目の起訴は、
2020年大統領選の結果を覆そうとした疑惑をめぐる重罪4件で司法省より起訴。
罪状は、米国に対する詐欺の共謀1件、
公務執行妨害の共謀1件、公務執行妨害1件、権利剥奪の共謀1件。
権利剥奪の共謀(19世紀に制定)は、
憲法や連邦法で保障された
「権利や特権の自由な行使や享受」において、
米国人を「傷つけたり、抑圧したり、脅迫したり、
威嚇したりすることを共謀」する行為とされています。
(すべて実刑になれば、禁固55年以上)

4度目の起訴は、
トランプ前大統領が2020年の大統領選挙で敗れた
ジョージア州の結果を覆そうとしたことによるもので、
同州フルトン郡州法に基づく13件の罪で起訴されました。
この件ではトランプ氏を含む19人が、計41件の罪で起訴されています。
すべてで有罪になれば、禁固70年以上。

これらすべてを合計すると717年という途方もない数字になるわけですが、
すべての罪状で有罪になっても実刑が言い渡される可能性は低いということです。

それよりも驚くべきことは
これだけの数を起訴されているのに、
2024年の大統領選の共和党指名争いで、
トランプ氏が依然としてトップを独走しているということです。
支持率の高さもあり、共和党陣営もトランプの支持を表明しています。
ジョージア州の裁判所が8月24日にドナルド・トランプ前大統領の歴史的な
「マグショット」、
つまりトランプ氏が犯罪容疑者として撮られた顔写真を公開しましたが、
マグショットが、Tシャツやショットグラス、マグカップ、ポスターなどに商品化。
トランプ陣営、支持派による売り上げは選挙資金や裁判費用になる予定です。
アンチ・トランプによるパロディー商品も多数(無許可で)販売されています。

さらに驚くべきこと、奇妙な点は、
起訴されるたびにトランプ氏の支持が上昇している点。
今のところ、
共和党内における主な次期大統領候補の支持率は
ドナルド・トランプ:54%、
ロン・デサンティス現フロリダ州知事):17%、
マイク・ペンス前副大統領:3%、
ティム・スコット現上院議員:3%、
ニッキー・ヘイリー元国連大使:3%
とトランプ氏が首位を独走中。
このままの勢いでいけば、
トランプ氏が指名を受けることになる可能性が高いのですが、
ロイター通信が行った世論調査によれば、
トランプ氏が有罪になった場合、
同氏に「投票しない」が45%、
「投票する」が35%であり、
足元は必ずしも盤石とはいえないのが現状です。

ここで重要になってくるのが、4件目の起訴です。
もし万が一、トランプ氏が大統領選に勝ち、
次期大統領になった場合、
自分の対する起訴を自己恩赦しようとするのは明らかですが、
恩赦をめぐっては、
1974年にニクソン大統領がウォーターゲート事件で辞任する直前、
司法省法律顧問室が「大統領は自らに恩赦を与えることはできない」
との意見書を残しています。
ただこの意見書には法的拘束力はないため、
トランプ氏が自己恩赦を与えた場合は合憲性が問われ、
最高裁で争われることになるだろうと言われています。
ただし、憲法修正第25条第3項に基づき、
「大統領が職務遂行が困難な場合、一時的に副大統領が大統領代行となり、
その際に恩赦を与えることは可能」
という逃げ道もあるため、警戒は必要です。
ただ4件目の起訴については、
大統領に自己恩赦の権限がありませんので、
有罪判決が下り、実刑判決を受ければ、大統領の仕事を遂行できません。
ですから、(トランプ陣営は裁判を2026年以降に開始することを望んでいますが)
この裁判が急ピッチで進むことが
今、一番、アメリカによって大変重要なことなのです。

起訴されたら有罪率99.9%という日本と違い、
アメリカの裁判は思わぬ結果が待っています。
これからも注意深くこの件を見守り、随時リポートしていきたいと思います。

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