アメリカ最前線リポートVol.23-2エメット・ティルさんとその母の人生を讃え、全米3か所が国定モニュメントに指定
ー CVリポートー
By アーカス・リツコ(CV メルマガ編集長)
【アメリカ最前線リポートVol.23-2】
・エメット・ティルさんとその母の人生を讃え、全米3か所が国定モニュメントに指定
エメット・ティル。
日本の方にはなじみのない名前かもしれません。
しかし、彼が1955年に惨殺された事件は
人種差別、公民権運動の原点となったこともあり、
アメリカで彼の名前は歴史的にも重要な存在です。
1955年、シカゴの14才の黒人少年エメットは親戚を訪ねていった先のミシシッピで、
白人女性に口笛を吹いたとして
その夫ら白人男性から目をくりぬかれるなど凄惨なリンチを受けた後、顔を撃たれ死亡。
遺体は川に投げ込まれました。
その惨たらしい遺体を見て衝撃を受けた母のメイミーさんは怒りを持って立ち上がり、
息子の遺体をシカゴまで運び、葬儀の際にひつぎの開け、
事件の残忍性を示すためにティルさんの顔を参列者に見えるようにし、
黒人メディアには写真撮影も許可しました。
事件は全米に衝撃をもって報じられ、
エイミーさんの正義を訴える活動は大きな支持を集めました。
しかし、陪審員が白人ばかりの法廷で犯人は「無罪」に。
市民権運動はさらに加速していきました。
その後、45年以上の紆余曲折を経て、
2022年 3月にようやく米国連邦法として、「エメット・ティル・反リンチ法」が制定。
これは人種差別によるリンチを憎悪犯罪と定める法案ができたのです。
そして、つい先日、2023年7月25日、バイデン大統領は、
エメット・ティルさんとその母メイミーさんをたたえるため、
葬儀場所の教会、
遺体が川から引き上げられたとされる場所、
白人容疑者に無罪判決を出した裁判所
を国定史跡に指定する布告に署名しました。
↑ 白人容疑者に無罪判決を出したミシシッピの裁判所前
事件後は教育家、活動家となったメイミーさんの物語は、
2022年に『Till』というタイトルで映画化されています。
ウーピー・ゴールドバーグがプロデューサーとして名を連ねたことでも話題になりました。
観ていて苦しい気持ちになりますが、最後は観てよかったと思える作品です。
機会があればぜひご覧ください。